sketch nagano architecture

建築設計士による、長野にある建築物のスケッチを蓄積します。

長野市中央通西側建物03

今回は前回の建物の駐車場を挟んだ建築物、山口金物店さんのもの。

 

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今回、この建築物から紹介したいのは「看板建築」と「間口いっぱいの建具」である。

看板建築とは、建築史家であり建築家でもある藤森照信氏が名付けた建築物の類型である。

藤森照信氏は長野県の諏訪出身の建築家で、様々なユニークな建築物を設計している。

彼の文章は建築を勉強していない人でも楽しく読め、また建築史における分析や見解もユニークであるため、本を読んでみてはいかがだろう。

 

そう、前回の記事の「トマソン」という概念を生み出した赤瀬川原源平氏とも「路上観察学会」で共に活動していた人でもある。

 

■看板建築

さて、看板建築に話を戻すが、詳細な定義は各自検索して頂くとしても、ざっくりと説明すると下記になる。

 

看板建築とは、洋風の外観を目指した店舗併用型の住居といえる。

洋風にしたいが、陸屋根(フラットな屋根)にするにはお金もない。そこで、通りに面した部分に陸屋根に見えるように外観をあしらったものである。

主に、関東大震災以後に東京に見受けられる建築物の類型であるといえるが、長野市にも今回の山口金物店のようにある。

しかし、かなり数は少ない。善光寺に近づけば近づくほど、門前町という歴史や景観への配慮から長野市にはそこまで定着しなかった類型といえる。

 

■間口いっぱいの建具(窓)

山口金物店さんも、正面から見ると陸屋根であるが、駐車場側から見ると、伝統的な通りに面した平入りの勾配屋根が確認できる。

 

そんな、伝統的な中央通りの建築物の特徴として、間口いっぱい開かれた建具が立面に表れる。

山口金物店さんの場合は、たくさんの日用品がディスプレイされていると共に、日常の活動が通りへと滲み出している。

 

現代の住居の玄関はせせこましく、人を迎え入れる場所や構えが貧しい。

けれど、通りに面して開かれた立面をもった立面や、建築物自体をうまく活用していかなければならないと思う。

 

今回の建物で二つ「看板建築」と「間口いっぱいの建具」を見つけたら是非注意してみてはどうだろうか。

看板建築では洋風の外観を先代が目指したのだなーとか思いを馳せてみると、現代の長野市から少しタイムスリップできるかもしれない。

間口いっぱいの建具を見た時、出入り口が小さい建築物と違って、少し入りやすく感じるたりと。

 

長野市中央通西側建物02

2つ目の建物ということで、前回描いた建物の北隣に位置する建物のスケッチ。

1階にSHOE MARTが入っている建物。

僕が学生の頃、約6〜7年前からSHOE MARTのロゴが書かれたロールスクリーンが備えられているのだが、店舗としては一度も使用されていない気がする。

広告としてしか1階が利用されていないという寂しさがある。

 

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ともかく、前回同様気になった点を列挙していく。

今回の目玉は最後の「トマソン」という概念。

 

■3連引き違い窓

建物の形態だけから察するに割と古い建物だと予想ができる。

最近よく立てられる建物で2階窓のように引き違い窓を3連で付けている建物をあまり見ないというだけの直感だけだが。

 

■仕上げ

外壁部分は改修が加えられているように見受けられる。

1階は特に窯業系サイディングやセメント系タイルが使用されている。

よく住宅メーカーの建物に使用される素材。

安価で汚れにくくメンテナンスが少なくて済む、さらに施工も短期間で可能という特徴がある。

しかし、僕はどうしてもレンガやタイルを模した窯業系サイディングやセメント系タイルが好きになれない。

違う素材なのに、なぜレンガやタイルを模さないといけないのかがわからないということと、どうしてもチープに見えてしまう。

価格が安いというのでその通りなのだけど、見栄えまでチープに見える。

 

■プロポーション

頭でっかちな通り側の立面。

3階まであるのか、屋上まであるのか外部からでは読み取れない。

3階まである場合は倉庫等に利用されているように思われる。

店舗をもった建物、つまり中央通りの建物では珍しくない形態といえる。

 

トマソン

赤瀬川原源平氏が「無用の長物」をトマソンと名付け、役に立たない物や作った意図がわからない物に名付け様々な事例を挙げている。

一度検索してみてほしい。

街を歩いている際により楽しめると思う。

例えば、どこにも通じない空にむかって伸びているような階段や、先に床がないドア等を挙げている。

 

今回の建物でトマソンを発見した。

(これを芸術と呼べるかどうかは抜きにし、この言葉を使用している。)

 

屋根以外照らせない、照明たちだ。

屋根の上に5つ照明が付されているが、どこを照らしたいのが全くわからない。

道を照らすのか、SHOE MART入る以前の店舗の看板を照らしていたのを残置したのか。

 

こういったものを見つけた時は是非、心の中でツッコミをいれてみてほしい。

街を歩く楽しみが増えると思う。

長野市中央通西側建物

長野にある建物のスケッチを蓄積していくということで、何か一連のテーマをもって描いていきたいと考えていた。

長野市の中央通りの建物の立面を描いていけば面白いのではないかという助言があったので、今日から実際にやっていこうと思う。

まずは中央通りの西側の建物を描いていきたい。

 

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一つ目の建物は末広町交差点の角地にあるビル。

1階に着物屋さんの「こおむら」さんが入っている建物。

新しい建物と違って職人さんの手の痕跡が残っていることが確認できる。

痕跡が見受けられるのは下記2点。

 

■サッシ

1点目はサッシ。つまり窓枠のこと。

窓枠の外側はアルミサッシだが、内側はスチールサッシ。

この内側にスチールサッシを細かく分割し使用しているのが、立面が引き締まって見える。

最近の建物ではスチールサッシの使用頻度はかなり低い。多く使われるのはアルミサッシ。名の通り、アルミで作られた機密性も高く、維持管理が楽で安い。ただし、アルミサッシは太くなってしまい、窓枠の存在がどうしてもチープに見えてしまう。

 

■左官

壁の上に塗りたくられている材料だが、これが風化して壁のコンクリートブロックの目地が見えてきている。

一つの材料だが、建物に肌理がでてやんわりと陰影を作っている。

 

しっかり持続させ、善光寺まで辿りつきたい。

長野を素描する

東京の設計事務所から長野市に移住し設計事務所を開業準備中。

信州大学建築学科で学んでいたものの、ここ数年長野では様々な活動が活発になっているように感じる。

僕が居ない間に、また学生の頃には意識しなかったものが沢山あることに気づく。

設計を学んでいたことを生かし、スケッチを通して長野の街を観察していきたい。

 

まずは先週末、内覧会が行われた長野市庁舎・長野市芸術センターを。

槇・長野設計共同体による設計。

 

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どの建物を対象にどのように更新していくかは未定だが、読者が街にある建物を見ることへのきっかけとなるようにしたい。

普段見ている風景が、少しでも変わって見え楽しめるよう努力していきたい。